ryu-hashimoto’s blog

グルテンアレルギースキーヤー、ドローンパイロットの話

ここ最近の世の中とグルテンアレルギーを持つ一人の日本人の主張に至らない会話の代わり

たいしたことはない

インフルと同じでしょ、大げさな。
お正月気分がようやく抜けてきた1月の中旬。
関東のラストフロンティア高崎市に住みながら、仕事の殆どは東京か地方都市。
一般的にはまだ聞きなれないだろうが、ドローンの業務導入やスクール開設のコンサルティングを主業にしているのだが、とにかく出張が多い。
複写機メーカーの勤め人エンジニアだった頃も月2回は大阪~鈴鹿の2泊出張のルーティーンをこなしていたけど、ドローンで独立するようになってからは貪欲に働く副産物でとにかく国内外の出張が増えた。
新幹線で仙台に行き、その日の夕方には飛行機で札幌。一泊してそのまま大阪、更に和歌山へ。自分がどこにいて次はどこに行くかも迷うくらいだ。

その多忙な時期が夏まで続くであろうと思いながら、暖冬の朝に湘南ライナーで乗り換えなしで恵比寿に向かう。
2時間20分の長旅は人込みを避けるために、約束の時間より一時間半も早く到着する各駅停車のグリーン車の席に座る。不織布マスクの上にN95マスクを被せたその姿は、誰もが不審者を扱うような目でやり過ごす。

東京に行くと

「インフルと同じでしょ、大げさな」

「あはは、臆病なのですみません」

そのうち笑えない時が来るよなんて心の水面ギリギリで思いながら、除菌シートで手をぬぐう。

どこに行っても厄介なのは食事

出張が多いと、地元の飲み仲間からは羨ましがられる。
牛タン、海鮮丼、ジンギスカン、串カツ、すべてグルテン(小麦)が入っている名物ばかりだ。
近くのセブンかマックで買ったセーフティーフードを買い込んで、出張先のホテルでネットフリックスを見ながら安ワイン片手に酔って寝落ちする。
全部小麦のせいだ。
札幌や沖縄、国際線はビジネスクラスを選ぶようにしている。
ラウンジにトマトジュースと芋焼酎があるからだ。
国際線のJALビジネスクラスではアレルギー食の対応が中途半端だった頃で、きゅうりの油いためを丁寧に運んでもらったこともある。
チーズだけ欲しいと言ってもクラッカーを一緒に運んできたりと、無知のおもてなしは無謀すぎる。
セブンのポークフランクとマックポテトは女神のように微笑んでいる。

とにかく消毒していた

どこに行ってもキレイキレイの除菌シートで手と顔の一部を拭き、マスクをして移動していたおかげか、それとも3年ほど病気という病気はしていない身体の底力なのかまだ感染はしていないようだ。

生活に制限があると別人格が見えてくる。

三月になると東京へは車で移動して、出来るだけ誰ともすれ違わないように仕事をこなした。
確か、二月のころは渋谷や新宿でもマスク人口は少なかったはずなのに、三月にはウィルス感染者増加に比例してマスク族が大半を占めてきた。
いや、僕は大丈夫。そう言っていた人もマスク村民になっていた。
マスクをした人たちは、何かを恐れている。新型コロナウィルスじゃないもう一つの見えない何かが肩越しに見え隠れしているような感覚で歩いている。
叫ぶほどの恐怖ではなく、はねのける勇気の出ない何かに背を向けたり、普段より早足になったりして、見えない何かを近づけないように逃げている。
密集を避けるように通告されながら、通勤電車に揺られる。
いつもとは違う停車前のブレーキ音、数秒遅れで開くドア、休業中のスターバックス。
自分の心理が狭い袋小路にゆっくりと追いやられている。

外食ができない

仕事帰りに立ち寄れない居酒屋、吉野家、お好み焼き屋。
心が拘束されながら、帰路の電車に乗り込んで、家路を急ぐ。
近所のスーパーに寄ろうか、混雑する時間帯だ。明日にしよう。
「グルテンアレルギーなんて、徐々に治るよ。少しくらい大丈夫だ。」
「コロナウィルスなんてインフルと同じでしょ、すぐ治るよ、大丈夫だ。」

経験者も少なく、医学的な治療法も確立されていない。

今は恐れながら生きていくしかないのだ。